KPIの設定とPDCAサイクル

観光地マーケティング・マネジメントに関するKPIとPDCAサイクル

目標達成に向けて、業務プロセスや進捗状況を把握するKPI*を設定し、PDCAサイクル*のもと業務を改善していく必要があります。
DMOが設定する目標及びその達成に向けた戦略はそれぞれ異なるため、KPIをどのように設定するかは、各DMOの判断によります。
ただ、地域に観光客を持続的に呼び込むためには、観光地への興味を高め〔旅前〕、来訪を実現し〔旅中〕、再来訪や紹介を促す〔旅後〕という一連の顧客行動(カスタマージャーニー)を円滑に回していくことが必要です。
地域は、こうした各段階の顧客行動に対応する適切な取り組みを展開する必要があり、取り組み実施中に目標達成への状況を間接的に把握するために、各段階に応じてKPIを設定することが効果的です。ここでは、以下の6つをKPIとして推奨します(推奨KPI)。

* KPI…主要業績評価指標(Key Performance Indicator)の略語。
* PDCAサイクル…Plan(計画)、Do(実施)、Check(評価)、Action(改善)の4つの視点をプロセスの中に取り込むことで、プロセスを不断のサイクルとし、継続的な改善を推進するマネジメント手法のこと。

旅前旅行先としての興味を高める(興味を持たせる)

地域への興味を高めるためには、地域を旅行先として認知してもらい、興味を持ってもらうこと、そして、興味を持った人々に対して適切な情報を届けることが大切です。

地域に対する興味レベルを知る

旅行先を検討している段階において重要なのは、どれだけ自分の地域が興味をもたれているのかを知ることです。そこで注目されるのが、地名や経験に対するインターネットにおける趨勢です。今日の顧客は情報の多くをインターネットで検索し取得していることに加え、インターネット上の情報は、数値データとして蓄積されており、過去データを含め継続的に取得可能であります。
そこで、旅前の活動状況を把握するためのKPIとして、「WEBアクセス数」をその一つとして推奨します。

WEBアクセス数

ネット上での検索量を把握することで、どういった地域や経験が興味関心をもたれているのかを把握することができます。
具体的には、運用しているWebサイトやSNSの利用状況を把握するために、まずはWEBアクセス数を日常的に把握し、その推移や利用状況に関する情報(どのコンテンツ(ページ)がどのように見られているのか等)をもとにアクションを展開していくことが考えられます。

旅中来訪を実現し、経済規模を高める(実際に来てもらい経験させる)

来訪を実現し、経済規模を高めるためには、地域が生み出す産品やサービスを演出し組み合わせ、地域ならではの「コト(経験)」として付加価値を高め、域外の人々を魅了していくことが重要です。

来訪レベルを知る

自地域にどれだけの人が訪れているのか、どの程度の消費活動を行っているのかという情報は、観光振興において、目標そのものとなるものです。ただ、同じ100万人が来訪する地域であっても、そのうち80万人が宿泊客であるA地域と、80万人が日帰り客であるB地域では、観光が地域経済に与える影響は大きく異なります。また、同じ1万人が来訪するイベントであっても、宿泊を伴うプログラムとしているC地域と、そうした消費機会の無いD地域では、地域経済に与える影響は異なることになります。
よって、来訪レベルは「人数」と「単価」の2つの視点から捉えることが必要です。ここでは旅中の活動状況を把握するためのKPIとして、「入込客数」「延べ宿泊者数」「旅行消費額推移」を推奨します。

入込客数推移

入込客数は、来訪した実人数で、人回で表わされます。調査対象としている観光地点の入込客数の総和を一人当たりの来訪地点数で除したものです。

延べ宿泊者数

延べ宿泊者数は、地域への宿泊者数(実数)と泊数を掛けた数であり、人泊で表わされます。延べ宿泊者数は、地域における宿泊施設の需要規模の目安ともなります。

1人回あたりの旅行消費額

旅行消費額は、ここでは一人回当たりの旅行消費額単価を指します。観光客の来訪が地域経済に貢献しているかを測る一つの値として、旅行消費総額があり、それは観光入込客数と1人回あたりの旅行消費額単価をかけることで算出されます。

旅後持続性を高める(ファンになってもらう)

地域の持続性を高めるためには、来訪経験を通じて、観光客を地域の「ファン」として、地域にとって観光客を再来訪させる(リピートさせる)ことや、その観光客に口コミで好意的な情報を発信してもらい、持続的な集客に結び付けていくことが重要です。

ファンレベルの測り方

一般に、経験している顧客の再購買に対し、まったく新規の顧客を購買させるには5倍の費用が必要とされます。そのため、リピーター確保は重要な取り組みです。実際、多くの地域において、来訪理由の最高位は「以前、来てよかったので」という自身の経験に基づく再来訪となっています。今日「ファン」のレベルは、いろいろな表現がされるようになっていますが、その基本は「満足したか」「再購買したいと思うか」「知人に推奨したいと思うか」という想いの強さを数値化したものです。
ただ、観光は旅行を伴うため、居住地から遠距離にある観光地の場合、「強い想い」があっても再来訪する事は難しいのに対し、近距離にある観光地は「強い想い」が無くても高い頻度で来訪することは少なくありません。すなわち、想いと行動とは、必ずしも一致しません。よって、地域においては「想い」と「行動」の両面からファンレベルを測ることが重要です。
そこで、旅後の活動状況を把握するためのKPIとして、「来訪者満足度」と「リピーター率」を推奨します。

来訪者満足度

来訪者満足度の把握には、段階評価が用いられており、他地域と比較するために尋ね方を同様とすることが重要です。
来訪者の満足度を高めていくことは、再来訪意向や紹介意向を高めることにつながり、満足度や再来訪意向・紹介意向は、観光客が観光地で経験する各種サービスの品質と密接な関係があることが明らかになっています。
来訪者満足度、再来訪意向、紹介意向の3つの指標は、それぞれ異なる意味を持っているため、3種全てを測定することが望まれます。ただ、統計的には3つの資料は相互に高い相関を持つ事も確認されており、いずれか1つを代表値として測定し、代用することも可能です。

リピーター率

リピーター率は、来訪者全体に占める再来訪者の割合を示します。実際にどの程度「顧客維持」出来ているのかについては、初来訪者と再来訪者(リピーター)の比率で把握可能です。リピーターの比率が高いことは、地域の事をよく知っている“既存の”顧客が多くを占めることを示しており、それだけ地域は安定的な集客を見込めることになります。
ただ、リピーターの比率が高いということは新規客が少ないという事でもあり、中期的に縮小していくリスクもあります。また、顧客のライフステージ変化に伴い、ぴたっと来なくなるということもあるので、あわせてリピーターの来訪間隔や来訪回数を把握することが望ましいです。

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